【検証】牛乳は体に悪い?乳糖は消化しにくいから飲むべきでない?科学的な根拠を調べてみた【研究結果リンクあり】

日本では小学生から給食で毎日牛乳を飲む習慣がある。誰もが飲み、骨を丈夫にするという健康に良いイメージがあるが、一方で

・ 乳糖は多くの日本人が分解できない(乳糖不耐症
・そもそも子牛のための飲み物で、人間が飲むべきでない

といった反対派の意見も聞いたことがある。こういう噂を聞くと牛乳を買うか毎回迷うので、調査してまとめてみた。

※書いた人は専門家でも科学者でも医療・栄養の専門の知識もない、ただ興味があるだけの素人です。
※乳製品を扱う組織にも動物愛護団体にも関係ない個人の意見です。

【検証】乳糖は多くの日本人が分解できない(乳糖不耐症

牛乳に含まれる乳糖を多くの日本人は体内で分解できない。だから飲むべきでないという反対派の意見だ。この科学的根拠はどこにあるのだろうか?

下記が素人にも分かりやすく、かつ科学的でかなり詳しかった。

(以降は、下記リンクより抜粋)


乳糖不耐症の原因

小腸粘膜にある乳糖分解酵素ラクターゼ)という、二糖類である乳糖をグルコースガラクトースに分解する酵素の活性が弱いことにある。牛乳100ミリリットルには乳糖が約5グラム含まれているが、この乳糖がラクターゼによって分解吸収されずにそのまま結腸内に到達すると、浸透圧上昇により水分を大腸内に引き込んで下痢の原因となる。

日本人の中に乳糖不耐症の性質を持つ人の割合の調査方法と結果

(2)「乳糖投与後の血糖値の増加」

1972年に日本人の乳糖不耐症者の割合を86%と報告した研究と79%と報告した研究がある。2003年に私たちが74名の若年女子集団を対象として行った調査では、82.4%が乳糖不耐症者であると判定された。

(3)「乳糖投与後の呼気中水素濃度上昇」

この方法によっては、1998年に51.6%と報告した研究と、1992年に94.7%が乳糖不耐症者であると判定した報告がある。

なぜこのように乳糖不耐症者の割合にばらつきが見られるかということについては、(2)の方法では血糖上昇には対象者の耐糖能という別な要因が関連してくるため、(3)の方法では結腸内の腸内細菌叢によって影響を受けるため、という理由が考えられる。

結局、牛乳を飲んでもよいのか

日本人は他の多くの民族と同じように成人性の乳糖不耐症が生じる民族ではあるが、このような集団でも、牛乳200ミリリットル中に含まれる、乳糖約10グラムの飲用ではほぼ症状の問題は生じない。 しかし、症状を強く意識する方たちはあまり意識しない方たちよりも、牛乳を摂取しない、という習慣がつきやすい。そのことによりまた、乳糖分解を助ける腸内細菌が定着しない。逆説的ではあるが、日本人においては、乳糖不耐症が「牛乳を飲む、飲まない。」をわけるのではなく、牛乳摂取習慣が「乳糖不耐による症状が強く出る、出ない。」を分けることになる。


(抜粋ここまで)

畜産の情報−調査・報告−牛乳摂取習慣と乳糖不耐症2008年6月
※塚田三香子氏は聖霊女子短期大学の公式HPにも名前が載っている方なので実在する栄養学の教授である。念のため。


上記の研究のサマリーと個人的な感想。


サマリー

上記によれば、日本人は乳糖不耐症の性質を持つ民族だが
・コップ1杯程度の牛乳であれば下痢などの症状はほぼ生じない
・牛乳を飲むほどに、徐々に乳糖分解を助ける腸内細菌が定着する、逆も正。

気になった点①

いくつかの論文で、成人性乳糖不耐症の生ずる民族においては、「乳糖不耐症と自覚する集団は、乳類を摂取しないためカルシウム摂取量が低い」ということが確かめられている。


カルシウムを摂取する手段は牛乳以外にもあるので、「牛乳を飲まないとカルシウムが十分に摂取できない」という論理は成り立たないことに注意。

気になった点➁

乳糖不耐症とした検査母数が少ないのでは?N=100にも満たない母数から、日本人は乳糖不耐症の性質を持つ人が多い民族である、と本当に言えるのか?




乳糖不耐性だから牛乳を飲むべきでないという主張への反論の検証

Jミルクの乳糖不耐性に対する主張

「乳糖不耐」はそれほど多くない 乳糖不耐は、乳糖を分解する酵素ラクターゼ)が大人では小腸で少なくなり、十分に働かないことにより起こると考えられてきました。しかし実際には、牛乳を飲んで下痢をする人の割合はそれほど高くないことがわかりました。


乳糖の摂取量と下痢発生に関するヒト試験(※1)によると、乳糖を30g(牛乳700mL相当)摂取したグループでも下痢は起こりませんでした。60g(1,200mL)摂取のグループでは50%以上の割合で下痢が起こりましたが、一度に1,200mLの牛乳を飲むというのは、実生活ではほぼありえないことです。


ウワサ16 日本人のほとんどは、牛乳を飲むとおなかをこわす | 一般社団法人Jミルク Japan Dairy Association (J-milk)

前提として、Jミルクという名前からして牛乳を飲むと体に良いという研究データしか出ないわけだが、根拠となる論文を読んでみる。

根拠となる論文による検証

上記の反論はミスディレクションだった。論文には下記のように書かれている。

・乳糖30g (牛乳700mL相当)では被験者のうち15/49人が、下痢ではないが何かしら症状を自覚した。
・乳糖40g (牛乳933mL相当)では被験者のうち4/49人が下痢、38/49人が下痢ではないが何かしら症状を自覚した。
・論文の結論部分でも「乳糖摂取によって血糖上昇がきわめて低かったのは予想外であった。」と書いてある。※血糖値の上昇が低いことは、乳糖不耐性を意味する
・実生活では実験の設定のように牛乳以外飲み食いせずに過ごすことはほぼない。(これは実験の性質上しょうがないことだが)

ヒトにおける乳糖の一過性下痢に対する最大無作用量とそれに及ぼす食べ方に関する研究 | 学術連合の研究データベース | 乳の学術連合
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/f13cn00000000xvm-att/studyreports2001-11.pdf

「牛乳によって起こりうる不利益」を「下痢」にすり替えている点が、ミスディレクションである。

上記論文の結果からも、日本人の多くは乳糖不耐性であり、多すぎる量の牛乳を摂取するべきでない、ということがわかった。

※Jミルクを批判する意図はありません。あくまで妥当性を検証したかっただけです。

結論

700mL/日であれば、牛乳を飲んでもよさそうという、 過激なネタを好む方にとっては面白くない結果になった。

ただ、乳糖不耐性については知識として小学校や中学校でも教えるべき内容だとは思う。
学校で言えば、毎日飲んでいるものが、実は飲みすぎると下痢やお腹の不調につながる可能性があること知らずに、毎日飲まされている事実はフェアでない。

食品業界のビジネス視点で言えば、消費者の購買意欲を削ぐようなネガティブな情報は広めたくないものだろうが、消費者の健康よりも自分たちの利益を優先する思想がどこまで生き残るのか、ということに非常に興味がある。

「牛乳飲むな」論争には、乳糖不耐性以外にも、畜産業が与える環境へのコストや育成方法の倫理的観点からの批判があるので、そちらもいつか詳しく調べてみたい。